いざ代表やリーダーになって、メンバーが思うように動いてくれない。
後輩に学生団体の運営を引き継がせたが、期待していたほどの成果が見られない。
メンバーのやる気を引き出したり、ビジョンや価値観の共通認識をつくるマネジメントをどのようにすればいいのかわからない。
「マネジメント」に関して悩みを抱える学生団体は多いです。
今回は学生団体の運営に必須となる「マネジメント能力」を「心理学」の観点から考えていき、圧倒的成果を出すことのできる「リードマネジメント」について解説します。
Contents
選択理論心理学とは
選択理論心理学は、アメリカの精神科医ウイリアム・グラッサー博士が提唱した、「人間の行動のメカニズムを解明した心理学」です。
グラッサー博士は、自分の精神科医としての経験の中で、薬を使った精神の治療に疑問持ちました。そこで、博士は患者の診療を重ねるなかで、「リアリティ・セラピー」というカウンセリング療法を確立しました。
このリアリティ・セラピーを理論的に整理したものが選択理論心理学です。ざまざまな人間関係が複雑に絡む環境の中で、よりよい人間関係と成果を築く手法として効果が認められており、現在では組織マネジメントやカウンセリング、家庭環境、学校教育などに幅広く活用されています。
また、選択理論心理学は考え方が簡潔で、人が自分の行動を選択するためのきっかけとその一連の流れが分かりやすく説明されています。なので、組織のマネジメントにおいては特にその効果が認められ、選択理論心理学を組織や職場におけるマネジメントに応用した「リードマネジメント」というものが今注目を集めています。
リードマネジメントとボスマネジメント
一般的に、マネジメントとは「人を介して仕事をする技術」だと言われています。
もう少しかみ砕けば、「チームの責任者として、その目標達成のために最善を尽くすこと」がマネジメントという言葉のもつ意味合いだと言えますね。
グラッサー博士も影響を受けた。アメリカの経営学者のデミング博士は、チームにおける責任者の役割を以下のように述べています。
①チームのビジョンと一貫した目的を明確に示す。
②メンバーは、システムの中で活動している。責任者はシステムを改善し続ける責任がある。
この役割を達成するためのマネジメントには、
2つの種類があると言われています。
ボスマネジメントとは
ボスマネジメントとは、チームにおいては、ルールや成果が重視されるあまり、
相手の感情に寄り添えずに威圧的になってしまったり、「相手をコントロールしたい」というスタンスでメンバーと関わります。そのため、一時的に成果が上がったとしても、メンバーのモチベーションは上がらず、責任者とメンバーが敵対的な関係に陥ってしまい、人間関係が悪化してしまいます。
結果として、チームを長期的に維持することが難しくなっていきます。
独立行政法人である労働政策研究・研修機構によると、活動に対するモチベーションを高める上で重要なこととして、良好な人間関係があげられたという調査結果があります。
このことから、チームにおける人間関係の大切さがわかりますよね。
では、リードマネジメントはどうでしょうか。
リードマネジメント
リードマネジメントでは、選択理論心理学を活用して成果と人間関係の調和を目指します。良好な人間関係をまず構築することによって、活動の中でメンバーのモチベーションを充足し、それによってさらに成果も上がるという仕組みです。
ここで気を付けたいのは、リードマネジメントは人間関係のみを重視するマネジメントではないということです。時には、メンバーに自立を求める厳しい考え方でもあるので、
「人間関係を重視するあまり、甘やかしてしまうマネジメント」とは根本的に違うということを覚えておくとよいでしょう。
ここで、メンバーの返信の遅さに対するマネジメントを例に3つを対比してみました。
ボスマネジメント
「なんでこんなに返信遅いんだよ?お前は本当にだらしないな。次から3秒で返さないとどうなるか、分かっているな?」
リードマネジメント
「お疲れさま。今回の件で、チームがもっと良くなるために感じたことを、伝えてもいいかな?」
甘やかしのマネジメント
「いろいろあって忙しかったんだろう?仕方ないよ!次からよろしく!」
改善してほしいところは同じなのに、伝え方によって全然違いますよね。
ぞれぞれのマネジメントの違いがイメージできたでしょうか。
リードマネジメントの基礎原則
さて、ここでは成果と人間関係の調和を目指すリードマネジメントの原則を紹介します。
リードマネジメントを進める上で、グラッサー博士は以下の3つの項目を基礎的な考えとして提示しています。
①クオリティ(上質)を追求する
②他者評価ではなく自己評価をうながす
③強制しない、組織から恐れをなくす
リードマネジメントを行う責任者は、常にクオリティを追求しなければなりません。
また、メンバーをマネジメントする上では、「自己評価」というものがキーワードになってきます。メンバーの活動の質をリーダーやマネージャーが評価することを他者評価と言うのに対し、自己評価は、メンバーが自分で自分の活動のクオリティを評価します。
なぜなら、他者評価は評価に対して納得性がない点が挙げられるからです。
また、成果だけ評価され、評価基準がわからないことが多いため、平等に評価をしているつもりでも、評価される側には不満がつのってしまうことが多くあります。
これに対して、自己評価でのマネジメントでは、まずメンバーに自分の活動を振り返らせ、自分自身で考えさせます。その時に、最低限の求められる基準については伝えておくことがポイントです。
リードマネジメントの8要素
リードマネジメントの要素は以下の8つです。
①支援的な人間関係をつくり上げる
②事実を話し合う
③メンバーに自分の活動を評価してもらう
④改善計画を取り決める
⑤しっかりとした決意を取り付ける
⑥言い訳を受け入れず、活動の話しを進める
⑦罰したり、批判したりせず、責任を自覚させる
⑧単純にメンバーのことを諦めない
どれも大切な要素ですので、メンバーと活動のことについて話す際は、
意識してみると良さそうです。
メンバーの寝坊を例に、この要素を取り入れた会話文を考えてみました。
メンバーA「すみません、寝坊してしまいました・・・!」
あなた「はぁ。また寝坊?これで何回目?」
メンバーA「本当にすみません・・・」
あなた「お前はいつもそうだな。どうせまた同じこと繰り返すんでしょ」
メンバーA「次こそはかならず・・・!」
あなた「もういいよ。そんなんだから恋人もいないんじゃない?」
メンバーA「・・・。」
メンバーA「すみません、寝坊してしまいました・・・!」
あなた「遅れているから何かあったんじゃないかと思って心配したよ。寝坊してしまったんだね。」
メンバーA「そうなんです・・・!アラームをかけ忘れてしまって!」
あなた「そうか。アラームをかけ忘れてしまった原因に心当たりはあるかな?」
メンバーA「実は、夜遅くまで飲みすぎてしまって・・・」
あなた「それが1番の原因っぽいね。もしAさんに後輩がいたとして、その後輩が遅くまで飲みすぎて寝坊していたら、Aさんは後輩に対してどう思う?」
メンバーA「うーん。よくないと思います。」
あなた「そうだよね。だとしたら、先輩になるという自覚をもって活動することが大切だと思いませんか。」
メンバーA「そう思います。」
あなた「じゃあ、次からできる対策を一緒に考えよう。」
このように、「いつ、どのように考え、行動したのか」という事実についての対話のもと、マネージャーとメンバーの間で失敗の原因の認識を一致させ、一緒に改善の方法を考えることができます。
いかがでしたでしょうか?
次回は実践編として、さらに具体的な学生団体におけるリードマネジメントの手法を例を交えて述べていくので、楽しみにしててくださいね!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!